エッセイ | 食のこころ

 

思い出のナイフ 2015年・冬

相談役 石戸孝行

今から50年ほど前、柏で最初のスーパーをオープンして2年経った昭和40年、スーパーマーッケットの先進国アメリカで学ばないかという企画が国から舞い込んできた。

アメリカと言っても、ハワイの大学で最新の授業が受けられるという案内だった。

日本で最初の海外研修の誘いだった。

1週間の授業だったが、終了間際に同室のN君が本土に渡ってもう少し勉強するという。

滞在延長の許可が貰えれば連れて行ってくれると言うので移民局に許可を頂いて私の本土行が決まった。

私の英語はめちゃくちゃだが、同室のN君は流暢な英語を話すので私は連れて行ってもらえればこの上なく安心だった。

カリフォルニアのサンバナディノという町のスーパーが受け入れてくれるということになった。

ハワイ大学の講習を終えて、私たちは一路本土へと向かった。

当時テレビで「ルート66」という番組を放映していたがその中にサンバナディノという町の名前が出てくる。

何となく親しみがわいたサンバナディノのスーパー「セイジ」という会社が私たちを受け入れてくれることになった。

Completed Store Sageと書いてあるだけあって、私には見るものすべてが興奮と感動に包まれた。

店から300メートルくらいのところのモーテルを用意していただき、私たちは毎日セイジに通った。

その店で働いていた日本人の女性が私たちの橋渡しをしてくれることになった。

キャシーと呼ばれていた女性とは日本語ですべてが通じたのでまったく助かった。

一日の仕事が終わって部屋で食べるのは決まって鳥のモモのローストだった。

その時に使ったナイフが今回の表題となった訳である。

青春の思い出がぎゅっと染み付いている思い出のナイフだ。