| ●格下の実力がすごいぞ! |
グルメの先輩は、キァンティといえば、1960年代の麻布のレストラン「キャンティ」だったり、藁つとに包まれたフラスコ瓶入りのキアンティワインを語りだしそうですが、トスカーナ州はキァンティ・クラッシコやブルネッロ・デ・モンタルチーノ、ヴィーノ・ノビレ・デ・モンテプルチアーノといったイタリア最高のワイン格付であるDOCGワインを数多く生産する一大銘醸地域です。
この地で数千年の歴史を持つサンジョヴェーゼというぶどうから造られるワインは適度な酸と控えめなタンニンのバランスが取れたすばらしいワインの数々を生み出します。
トスカーナの地中海に近いボルゲリという所で、第二次大戦の末期にボルドーのシャトー一級、ラフィット・ロートシルトのぶどうの木を植え、ワインの熟成用にボルドーのいくつかのシャトーから古い樫樽を持ち込み自家用にワインを造っていた男がいました。
次第に評判となったそのワインは、少しだけ商用に出回るようになり、1978年、英国の代表的なワイン誌「デキャンター」が主催したテイスティングで、世界最高のカベルネ・ソーヴィニヨン34本、のひとつに選ばれました。席上、イギリスの高名なワイン評論家ヒュー・ジョンソンは「これはイタリアの最高の赤だ!」と絶賛したといいます。
ワインを造ったのはマルケーゼ・マーリオ・インチーザ、ワインの名は「サッシカイア」。フレンチオークのボルドースタイルのヴァリック(225リットルの小樽)で熟成されるワインは、ぶどうの品種も、伝統的なイタリアワインの醸造法とも異なる新風をイタリアに吹き込んだのでした。
イタリアのワイン法の規定に従わないワインは、最上級の格付DOCG(統制保障原産地呼称)ワインや、DOC(統制原産地呼称)ワインクラスとしては認められずに、IGT(地酒)やVDT(ヴィーノ・ダ・ターボラ
テーブルワイン)に属した格付でしかありません。しかしながらサッシカイアの実力を認めたワインジャーナリストたちは凡庸なテーブルワインと明らかに違うこのワインに「スーパー・トスカーナ」という賛辞を送ったのでした。この流れは80年代、90年代とトスカーナのみならず、イタリアワインの近代化の大きな流れとなって現在も続いているのです。イタリアワインは常に革新と伝統のダイナミズムを持って私たちにワインの楽しみをもたらしてくれます。 |
|
| ●ワイン産地、トリノが州都なの? |
荒川選手の金メダル1つに、救われた気がしたトリノオリンピック。トリノはイタリアを代表する2大ワイン銘醸地、ピエモンテ州の州都なんですよ。ご存知でしたか?中部のトスカーナ州と北部のピエモンテ州、フランスで言えばボルドーとブルゴーニュのような対比が出来るでしょうか。トスカーナは貴族が大規模なキアンティを造り続けて来た歴史からボルドーに、ピエモンテは小さな規模のワイン醸造家が多くブルゴーニュにたとえられたりします。
ピエモンテのワインはバリエーションが豊富で、白ワインの辛口、ガヴィや発泡性のアスティ、赤ワインはバローロ、バルバレスコ、ガッティナーラといった力強く長命なワインが大変に有名です。ネッビオーロというピエモンテを代表する黒ぶどうは、ランゲという丘陵地帯のバローロ地区とバルバレスコ地区のものだけが長期熟成のワインになりえる!という神秘的な品種です。
バローロは19世紀から「王さまのワイン」といわれてイタリアを代表する高級ワインでした。しかし1970年代には人気は凋落し、存続すら危うい危機的状況になってしまいました。バローロを造るネッビオーロは果皮の色素が少なく、色出しのためには長時間、果皮を果汁に浸けなければなりませんでした。そのため果汁に必要以上のタンニンも出てしまいます。これを飲み頃まで和らげるのには10年以上の時間を要しました。いかにスローフードのイタリアでも現代人にこれは次第に受け入れられなくなってしまいました。70年代後半からトスカーナの革新的な醸造家の台頭と同じように、ピエモンテの醸造家たちも立ち上がり、収穫を遅らせたり、窄汁をソフトにして、タンニンが出過ぎない工夫をしました。ボルドースタイルのヴァリック(小樽)を使ってタンニンを和らげることで早く飲みごろを迎えられる近代的な醸造法に改めて、新しいバローロとして復権し今日に至っています。世界の至宝イタリアワインはこれからもどんどん進化していきそうですよ。 |
|
| 文中の資料として「社団法人・日本ソムリエ協会」の「ソムリエ・ワインアドバイザー・ワインエキスパート教本」を参照させていただいております。 |
●夏におすすめの1本●
グラーティ・キアンティ・ルフィーナ・
リゼルバ1990
KEIHOKU販売価格 2,000円(税込)
※価格は2006年6月現在のものです。 |
 |
|