田辺さんのバナナ(エクアドル 取材:田辺農園) | ざ・けいほくOnLine

田辺さんのバナナ

バナナの産地でよく目にするのは、フィリピン産、台湾産などで、フィリピンは日本に距離が近く輸入に便利といる利点があり、台湾は日本に近いですが、バナナの産地としては北に位置しているので冬が寒く、熱帯や亜熱帯気候で育つバナナにとっては、少し無理をした栽培になっているようです。そして、KEIHOKUプライベートブランドの田辺さんのバナナは、南アメリカの西部、赤道の上にあるエクアドル共和国で栽培され、昼の気温は32〜33℃、夜の気温は20℃といった、赤道の上でありながら、南極から流れてくるフンボルト海流という冷たい寒流によって、朝晩の寒暖の差が生じ、そのことからバナナの栽培に適していて、その輸出量は世界第1位となっています。また、「エクアドル」とは、スペイン語で「赤道」という意味を持っています。

 

エクアドルでのバナナの生産者は約6000人。その中で唯一の日本人生産者が田辺さんです。田辺さんの農園は、エクアドル共和国の中でもさらに赤道直下に位置する、エスメラルダス州にあり、面積は380ヘクタールと、東京ドーム約82個分もあり、標高は300メートルと、同じエクアドルの中でも比較的高い位置にあることから、さらに朝晩の寒暖の差が生じ、バナナの栽培に適しています。この広い田辺農園で、スタッフ300人が働いていて、そのうちのトップ5が日本人となっています。

 

田辺さんが栽培するバナナの品種の70%はバレリー種というもので、栽培するバナナの品種は、その地区の病害虫に強い品種が選ばれます。

 

田辺さんのバナナのこだわりは、まず土づくりです。EM菌が入った「ボカシ肥料」、鶏糞にEM菌を入れて自然発酵させた、「鶏糞堆肥」、ミミズを土の中で育てる「ミミズ糞堆肥」の3つの肥料から作られています。それぞれ、「ボカシ肥料」には微生物が生きた土となり、「鶏糞堆肥」には、窒素、リン酸、カリウムといった栄養素が含まれ、「ミミズ糞堆肥」には、ミミズが動くことによって土の中の通気性がよくなり、保水されるといった役割があります。

 

除草剤、殺虫剤についても、ここでは一切使用していません。除草剤や殺虫剤を使用すると、土がやせてしまい、化学肥料を投入して土の状態を良くするしかなくなってしまうからです。

 

そして栽培期間においても、通常エクアドルでは実が付いてから14週で収穫をしますが、ここでは、さらに1週間長い15週で収穫をします。少しでも長く木の上で熟成させ、バナナにしっかりと味をのせるためです。

 

田辺農園では、バナナの実がつくと、すぐに鳥や虫から実を守るために、全ての房に袋をかけます。その後、房と房の間にすれ傷防止のためのプロテクターを付けます。そして、その際10種類の色テープで色分けし、巻き付けて、収穫のタイミングを管理しています。バナナの木は1本につき、約8房の実を付け、その重さは約30 kgあるそうです。収穫の時のバナナの実は、きれいな緑色をしています。

 

田辺農園現地スタッフ

田辺農園現地スタッフ

収穫したバナナは、農園に張りめぐらされているケーブルを利用して、素早く選果場に運び込まれます。ここでは、審査員によりバナナの審査が行われるのですが、色、外観が良くても、バナナを切り、中が熟し始めていたら審査が通りません。バナナは主に輸出されるので、輸送されている間に熟してしまうからです。田辺さんが丹精込めて育てたバナナも、この厳しい審査によって、収穫したバナナの約90%しか、合格することができないそうです。ここで審査を通ることができなかったバナナは、田辺農園の肥料として使われます。

 

審査が通ったバナナは、長さ10メートルのプールみたいなところで、地下110メートルからくみ上げた地下水をフィルターに通し、活性炭素、オゾン殺菌をした水できれいに洗います。“どうせ洗うならきれいな水で。”と、洗う水にもこだわっています。そしてエアで異物を飛ばし、箱詰めをし、冷蔵コンテナに入れて輸出されます。

 

田辺農園では冷蔵コンテナを農園に直接横付けしてもらい、収穫後2時間程度で冷蔵コンテナに入れられるように作業を進めているので、品質の劣化防止になっています。また、この時のコンテナの温度を14℃程度に設定して、バナナが冬眠したような状態にします。このバナナが冬眠をしたような状態を維持したまま、鮮度を落とさないように輸出をしています。

 

エクアドルから日本へのバナナの輸送は、船で25日間です。飛行機では?と思いますが、バナナは寒さに弱いので、気温が低くなる空輸では、バナナが傷んでしまうのでむかないのです。

 

緑色のバナナを黄色く色付け、追熟加工をする、株式会社 ヤマセイ商事様では、冷蔵コンテナで運ばれてきたバナナを温度13〜13.5℃で保たれた保管庫に入れて一時的に保管をします。

 

ここでのバナナの色付け、追熟加工期間は1週間なので、出荷のスケジュールに合わせ、逆算をし、色付け、追熟作業の開始日を決定します。

 

バナナの追熟加工はまず、冬眠していた温度より高い18℃程度に温めた室(むろ)の中に、バナナが入った箱を井桁状に積み上げ、果肉の温度を上げることにより冬眠状態のバナナを起こすことから始まります。次にバナナ自身が放出するエチレンガス(植物ホルモン)を人工的に室に撒布して、追熟を促します。いったん、バナナが熟し始めると、バナナ自身が熱とエチレンガスを放出し、追熟が進んでいきます。エチレンガスの散布工程では、大手メーカーのようにコンピューター管理で自動封入するのではなく、ここでは、バナナの加工職人がいて、昔ながらの方法で、その日の気温、湿度、バナナの状態から判断をし、日々、エチレンガスの量を微調整しながら、加工職人の手で撒布します。そして、エチレンガスで膨らませた風船を室内で離すような、古風なやり方をするようです。また、バナナが入った箱を井桁状に積み上げるのは、エチレンガスを室の中、バナナのすみずみまで均等に行き渡らせるためで、仕上がりにバラツキが出ないようにしています。追熟途中でバナナが発熱し、果肉の温度が高いままだと、熟しすぎてやわらかいバナナになってしまうので、加工職人の手により、色、追熟の様子を見ながら、徐々に、冬場は14℃、夏場は13℃まで室の中の温度を下げていきます。

 

このような加工職人による昔ながらの追熟加工は、作業効率こそ悪いようですが、加工途中で外皮の色回り、果肉の状態、糖度、食味のチェックを何度も行っているので、おいしいバナナを安定して出荷できるのです。

ヤマセイ商事の高山社長

説明してくださったヤマセイ商事の高山社長

はみ出しコラム

バナナ

原産地は熱帯アジア、マレーシアなど。バナナの栽培の歴史はパプアニューギニアから始まったと考えられています。「バナナの木」と言われるように、高さ数mになりますが、竹類などと同様に草本であり、正確には果物ではなく野菜(果菜)に分類されます。日本国内でも南九州・沖縄県を中心に栽培されています。普通のものよりはるかに短くて小さいシマバナナという品種も見かけます。

バナナ園遠景

バナナ園遠景

田辺さんのバナナ園での収穫風景

田辺さんのバナナ園での収穫風景

入荷したてのバナナを確認する取材班

入荷したてのバナナを確認する取材班

はみ出しコラム

バナナの利用

バナナは、皮をむけば衛生的であり乳幼児でも摂食できるので、バナナ果肉中に抗原を生産させ、経口ワクチンとして利用するための開発が進められているそうです。衛生環境が悪く、電力が不安定でワクチン保存環境も悪い所でも、現地において衛生的で再生産可能な経口ワクチンになるのではないかと期待されています。

加工工程写真
  1. 入荷したばかりの青々としたバナナ
  2. バナナを井桁状に重ねることでエチレンガスが均等に浸透します
  3. エチレンガスを風船に入れ室の中に放出します
  4. 加工職人の目で熟成状態をチェックします
  5. 追熟が完了し“グリーンチップ”と呼ばれる状態になったバナナ
  6. ひとつひとつ丁寧に小分けします
  7. 出荷を待つバナナ

これに比べ、大手メーカーでは大量生産するために効率を求め、輸入されたパレット積みのままで加工を始めるので、エチレンガスが均等に行き渡らず、仕上がりにバラツキが出やすくなります。また、短期間で加工をするために加工温度を上げているので、柔らかすぎるバナナができやすく、バナナ本来の風味も失ってしまいます。

 

大手メーカーでは、高温で早く、5日くらいで色付け、追熟しているのに対し、ここでは、低温でゆっくりと、加工職人により何度もチェックをしながら1週間かけて色付け、追熟加工をしているので、バナナの風味があり、ねっとり、もっちりとした、適度な酸が残りながらも、糖度が高いバナナが出来上がります。

 

バナナは色、熟度によりNo・1〜No・7までの7段階に分けられます。輸入されたばかりの緑色のバナナはNo・1、真っ黄色はNo・6、シュガースポットといって、黄色に黒い点々がでてきた状態をNo・7といいます。KEIHOKUに出荷されるバナナはNo・5で、グリーンチップと呼ばれ、バナナの先と軸の部分がグリーンで、本体が黄色の状態です。

バナナチャート

 

それぞれの出荷先に合わせた色付け、追熟加減で出来上がったバナナは、室から出され、手作業により、袋の入数に応じてカットをし、袋詰め、箱詰をします。

 

田辺さんのバナナは、有機肥料を使い、除草剤や殺虫剤を使用しないといったことから、より安全性の高い食品として、ヨーロッパのユーレップギャップという資格を取得しています。

 

田辺さんが作った、木の上でじっくり熟成させたバナナを、昔ながらの室と加工職人による色付け、追熟加工を行い、さらに美味しさが増した田辺さんのバナナをぜひご賞味ください。

 

●バナナに黒い点々が出てしまった状態でも、これは、バナナが完熟している状態で、酸味がなく糖度が一番上がっている状態です。

 

●バナナの保存は、冷蔵庫には入れずに、袋から出して、日が当たらず、涼しく、風通しが良い場所でお願いします。13.5〜14℃がちょうど良い温度です。

 

※エクアドルの産地の様子は、産地には伺わず、株式会社ヤマセイ商事様からいただいた、産地の様子が収録されているDVDと、株式会社ヤマセイ商事様からのご説明を参考に書かせていただきました。尚、色付けや追熟加工に関しましては、現場を訪れ、その時見せていただいたことや伺ったことを参考にさせていただき、書かせていただいております。

 

加工場の皆さんと取材班

加工場の皆さんと取材班

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