日光天然の氷 - 四代目徳次郎 - (栃木県日光市 製造:氷屋徳次郎 販売:有限会社フードピア日光) | ざ・けいほくOnLine

日光天然の氷

 天然氷の文化は日本にしかないようで、明治時代に初めて北海道で作られたと言われています。

 栃木県日光市は、山々に囲まれ自然が豊かで水がおいしい地域です。そのことからか、天然氷を作ることが、日光の文化となっているようです。主に食料の保存のために作られていた天然氷でしたが、JR日光駅ができると、観光客が増え、さらに、昭和40年頃には喫茶店ブームがきて、アイスコーヒーに入れる氷など、かちわりの氷が出回ってきたそうです。

 昭和初期には日光に10軒あった天然氷の製造者ですが、今では3軒となってしまい、そのうちの1つに、「氷屋徳次郎」があります。  「氷屋徳次郎」は、今から4年ほど前に100年続いた天然氷の製造を三代目が高齢のためにやめてしまおうかと考えたそうですが、天然氷の作り方を、日光の文化を残そうと、四代目徳次郎さんが引き継ぎました。

 

日光風景

山々に囲まれ自然が豊かで水がおいしい日光は、古くから天然氷が作られていました

四代目徳次郎さん取材風景

天然氷の文化を伝承する四代目徳次郎さん

 四代目徳次郎さんの天然氷を作るための池は、タテ15m、ヨコ30m、深さ0.5mで、日中でも陽が差さない山陰に人工的に2個作られています。

 池に水をはる12月1日頃までは、池の底にある土の土づくりをします。氷は自然の寒さで凍り、池の上から下に厚みを増して凍っていくのですが、池の底がコンクリートだったり、土が固かったりすると、氷が膨張したときに池の底が伸縮できず、また、不純物も吸収されないので、木の葉や、ゴミをとり、土がやわらかくなるように、何度も掃除を繰り返し、土づくりをします。

 こうしてきれいに清掃され、土づくりがされた池に、500m離れたところにある沢の水を、パイプを通じて池に入れます。その後すぐに氷を張るのではなく、わざと池の表面に波を起こし、氷が張らないようにして寒波がくるまで待ちます。

 こうして寒波が期待できそうになった時、わざと起こしていた波を、沢からつながっているパイプの入口を板でふさぎ、池の表面の波を止めます。  氷はゆっくりと凍ると、うろこ氷と呼ばれるやわらかい氷になり、また、急に凍ると、花氷と呼ばれる小さな氷の集合体となってしまいます。万一、うろこ氷や花氷になってしまった場合には、氷を割り、もう一度水を入れなおして、納得がいく氷が張るまで、何度でも何度でもやりなおします。

 四代目徳次郎さんは、初代徳次郎さんの頃より「一番固い氷を作れ」と言われてきたそうです。固い氷を作るのに適した気温はマイナス7℃〜マイナス8℃、この気温はその土地の地形などに関係があるそうですが、四代目徳次郎さんの池では、この気温が適温となっていて、氷が凍っていく速度と気温が、固い氷作りに影響するそうです。

 納得がいく氷が張り始めたら、毎朝、氷の上の掃除を行います。氷の上の清掃は、雪を氷の上に撒き、箒で掃きながら、雪にちりやほこりを巻き込んでいきます。ちりやほこりがあるときには、雪の色は汚れています。雪の色が白くなるまで、何回も行います。氷を張っている間、雪が降ると、氷の上の雪かきをします。これは、雪の温度は氷作りにとっては高い温度なので、雪により氷が溶けて氷が傷んでしまうからです。

 こうして、2週間〜20日かけて凍らせ、氷の厚さが14〜15pになったら、切り出しという作業をする時期を待ちます。切り出しは、タテ15m、ヨコ30mの池に張った氷を、タテ45p、ヨコ75pの大きさに切る作業のことで、寒い日が続かないとできません。切り出しが行えそうな日の前日には、氷の上に目印のラインを引きます。そして当日には、このラインにそって、動力カッターにより、切り出し作業を行います。ここで切り出された氷1枚の重さは、約40kgもあり、1個の池で約1000枚の氷を切り出します。

 そして、この切り出し作業は職人でないとできません。ここでは2人の切り出し職人に切ってもらいます。  切り出された氷は、あらかじめ組みたてられた、竹でできたレールの上を滑らし、氷室(ひむろ)の中へと運びます。そして竹の節はスピードを調節してくれます。氷室の中では、1枚の氷に対し、3枚のふた氷を乗せ、積み重ね、日光杉のおがくずで囲い保管します。日光杉のおがくずは、周りの温度を吸収し、発散するので、氷の表面も乾き、この方法により、約1年間、天然氷は保管ができるそうです。  「氷は生き物」と四代目徳次郎さんはおっしゃいました。

 天然氷といっても、ただ、池に氷を張らせることだけではなく、氷は気温によって、さまざまな凍り方をし、自然に大きく左右されることがわかりました。この自然をうまく感じ取って、生き物である氷を作っていくのは、職人技だと感じました。

 この四代目徳次郎さんが作った天然氷のかき氷を、取材の日にいただきました。ボリュームたっぷりに盛り付けられたかき氷にびっくりし、いざ、食べてみると、私なりの感想ですが、雪を食べているかのように、ふわっと口の中で溶けていきました。

 また、商品になっている氷を食べてみると、一般の冷凍庫で作られた氷とは違い、甘くてまろやかな、やわらかい味がするなと感じました。  「一番固い氷を作れ」と代々続いてきた四代目徳次郎さんの氷は、冷凍庫で急に凍らせた氷とは違い、自然の力でゆっくりと凍らせているので透明で固くて溶けにくく、自然が伝わってくる氷です。

 

生産者の皆さんと取材班

生産者の皆さんと取材班

※ 天然氷の切り出し作業については、取材に伺った時は切り出しが終わっていたため、作業風景の画像をいただき、四代目徳次郎さんのお話と、フードピア日光様のホームページを参考に書かせていただいております。

氷屋徳次郎さんの番屋

趣のある氷屋徳次郎さんの番屋

四代目徳次郎さんへの取材風景

四代目徳次郎さんからお話を伺いました

はみ出しコラム

かき氷の日

日本かき氷協会は7月25日をかき氷の日と制定しています。みなさん知っていましたか?かき氷の別名である夏氷(なつごおり)を7,2,5と語呂合わせしたほか、1933年7月25日に当時の日本の最高気温(40.8℃)が記録されたことにちなんでいるそうです。しかし、2007年に40.9℃の最高気温が岐阜県多治見市と埼玉県熊谷市で観測されました。今年は昨年のような記録的な暑さはない見込みだそうですが、夏にはやはりおいしいかき氷を食べたいですね。

天然氷を作る山陰の人工池

天然氷は日中でも陽が差さない山陰の人工池で作られます

氷の上の掃除

毎朝4時から氷の上に撒いた雪を箒で掃きながら、ちりやほこりを取り除きます

雪かき

雪は氷にとって大敵。雪の温度で氷が解けないように総出で雪かきをします

切り出し前作業

氷が十分厚くなったら、切り出す前日に目印をつけておきます

切り出し作業

動力カッターで目印に沿って切り出します

切り出し作業

切り出した氷を運ぶ四代目徳次郎さん

竹レールを使った運搬

竹で作ったレールの上を滑って進む氷

貯蔵作業

氷室(ひむろ)には氷が整然と並べられます

貯蔵庫(氷室)

今年2月に切り出した氷は4,000枚にもなりました

日光杉のおがくずを利用した保管方法

切り出した氷を日光杉のおがくずで覆い、一年を通して貯蔵します

ざ・けいほくバックナンバー