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後文の稲庭うどん

秋田県湯沢市稲庭町 株式会社後文

後文の稲庭うどん

300年の伝統を引き継ぐ手作りの稲庭うどん

稲庭うどんは、秋田県の稲庭地方で1600年頃に起こり、今でも引き継がれている伝統の手延べうどんで、香川県の讃岐うどん、群馬県の水沢うどんと並ぶ、日本三大うどんの1つです。

特徴としては、乾燥の前に麺をつぶすので、麺の断面が四角く平べったく、油は使わず、でんぷんを使って麺を延ばしていて、喉越しが良く、もっちりとしています。

今では、稲庭うどんのメーカーは、自分達で製麺した稲庭うどんを袋に詰めて販売するのではなく、製麺業者に稲庭うどんの製造を依頼し、そのできあがった麺を、稲庭うどんのメーカーが袋に詰めて、その稲庭うどんのメーカーが製造をしたとして、販売をすることが多くなってきてしまっているというのです。

袋詰めを行ったメーカーが製造者として名乗れるというのです。

このような中、後文様は、稲庭地方の清冽な水と、上質な小麦を使用し、300年もの伝統を引き継ぎ、練りから仕上げまで全て手作りで1本1本丁寧に作られています。

そして、この手作りの稲庭うどんを自社で袋に詰めて販売するという、製麺から袋詰めまで全て一環で行っています。

左)稲庭手造り饂飩 かんざし / 右)稲庭手造り饂飩

このように一環生産を行っている後文様も、数10年前には、後文様の最大のお取引先様がなくなってしまい、注文がストップしてしまうという、倒産になってしまうかもしれない危機がおとずれました。

このような中、佐々木社長は「もう一度やり直すには今しかない」と、原料や製造工程など全ての見直しを決意しました。

全てを見直した結果、3日間かけて作っていた製造工程は、熟成時間などを計算していくと4日間必要だということが分かり、長い時間をかけてじっくりと作られる工程へと変えられました。

こうして見直された製造工程は、まず、作業前日、地下100mからの湧き水と、長崎五島灘産の「いそしお」で塩水を作り、一晩寝かせます。

この「いそしお」は、原料の見直しの際、約40種類の塩の中から選ばれたもので、価格は以前使用していた塩の約3倍にもなりました。

ここで、塩水の塩分の濃度は、夏場と冬場では変えています。

作業1日目、一晩寝かせた塩水に小麦粉を入れ、練り上げます。

このときの小麦粉は中力粉を使用します。

中力粉はオーストラリア産90%、国産8%、アメリカ産2%のブレンドで、ここでオーストラリア産を多く配合するのは、広大な場所で作られる小麦なので、狭い場所で作られる日本産よりもグルテンが安定しているからです。

ここでの加水量は58%前後となっていて、通常の50%に比べると高めとなっています。

加水量が多いと麺が作りにくいそうですが、稲庭うどんは高めの加水量で作られるそうです。

また、練り込み時間は13~15分間、通常は30~40分間練り込むそうですが、ここでは、次の工程のことを考え、短めに設定をしています。

練り上げた生地は平らな台の上に4~5人がかりで乗せ、3時間ほど寝かせます。

その後、機械を使いプレスし、また職人が生地をたたんで機械がプレスするといった作業を2回繰り返します。

これは、練り込み作業が13~15分間と短く、生地がやわらかいので、均等に水分が生地にわたるように、プレスし、たたむという作業をするのです。

この作業の後、初期熟成として生地を2~3時間熟成させ、板状に平らに広げます。

その生地を短冊状に切り揃え、箱の中にいれ、約1時間休ませます。

そして、その短冊状の生地を手で転がし丸めながら、おけの中に渦巻き状に入れていき、一晩寝かせます。

ここで1日目の作業は終わります。

作業2日目は一晩寝かせた生地を、2本の竿に手作業で8の字にかけていきます。

また、このとき、麺棒で麺をつぶし平らにしていくのですが、この作業により、稲庭うどんの特徴である、四角く平らな断面ができるのです。

そして、平らにした麺を木箱に入れ、所定の長さまで延びやすいように、室熟成させます。

その後、この熟成した麺を竿に掛け、麺同士がくっつかないように、さいばしで麺線をほぐします。

さらに、麺の長さが175~180㎝くらいになるまで少しずつ延ばし、足止めを行います。

そして、麺線を整え、次の日まで十分に時間をかけ初期乾燥作業を行います。

作業3日目は、麺の上と下では乾燥の進み具合が違うため、一時乾燥を止めて、麺線の中の水分を表面に出し、時間をかけて麺線熟成を行います。

作業4日目は本乾燥を行います。

ここでの本乾燥の温度は50~60℃で、一般的には25~30℃という低温で乾燥させるのに対し、高めの温度となっています。

一般的に低温で乾燥させるのは、高温で乾燥させると乾燥の途中で麺が割れてしまったり、麺が落ちてしまったりと難しいため、高温での乾燥はやりたがらないそうです。

ところがここでは、比較的高温で乾燥させても途中で麺が割れたり、落ちたりといったことがなく、また、虫やカビの原因となる水分量も、乾麺の水分量の定義が13~13・5%に対し、11~11・5%と水分量を少なくしています。

本乾燥後、職人が麺を刈り取り、上下の竿にかかっていた麺の部分と、まっすぐな麺の部分を所定の長さに切り揃え、7分割します。

そして、形状の良いものだけを選別します。

ここで、上下の竿にかかっていた麺の部分は、「かんざしうどん」と呼ばれ、創業者の奥様が名付けられたそうです。

そして、この「かんざしうどん」は、竿にかかっていた麺の部分は太く、竿と竿の間のまっすぐな麺の部分は細く、1本の麺でも厚みや太さが違うことから、茹でたときに2つの食感が楽しめるので、通常のまっすぐとした稲庭うどんよりもかんざしうどんを好まれる方もいらっしゃるようです。

強力粉を使用すると、グルテンが強く、製造工程が早く終わりますが、強力粉でできたうどんは茹ですぎるとコシがなくなりおいしくなくなってしまうので使用せず、生地を寝かすことによりグルテンが戻り、コシが強くなる中力粉を使用し、何度も熟成を繰り返し、4日間かけてじっくりと作られた後文様の稲庭うどんは、細くてもコシがあり、喉越しが良く、もっちりとして、とてもおいしい稲庭うどんです。

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2つの食感が楽しめる「かんざしうどん」

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佐々木社長にお話を伺いました

佐々木社長と取材班

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1. 清冽な地下100mからの湧き水と長崎五島灘産の「いそしお」で作った塩水で練ります。

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2. 茹で過ぎるとコシがなくなる強力粉は使用せず、グルテンが安定し、寝かすことによりグルテンが戻り、コシが強くなる中力粉を使います。

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3. 生地作りの作業は4~5人がかりで行います。

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4. 生地に均等に水分がわたるように、プレスし、たたむ作業を2回繰り返します。

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5. 生地を短冊状に切り揃え、箱の中に入れて休ませます。

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6. 短冊状の生地を手で転がし丸めながら、おけの中に渦巻き状に入れて一晩置きます。

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7. 一晩寝かせた生地を2本の竿に8の字に掛け、手作業で延ばしていきます。

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8. 延ばした麺を麺棒でつぶすことで稲庭うどんの特徴である四角く平らな断面ができます。

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9. 平らにした麺を木箱に入れ、熟成させます。

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10. この状態で3日かけて初期乾燥~麺線熟成~本乾燥を行います。

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11. 刈り取り作業。このあと7分割に切り揃えます。

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12. 均等に切り揃えた麺を、手作業で袋詰めしていきます。

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仕上がりをチェックするバイヤー

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